ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

肝臓の腫瘍とエコー検査

肝臓の腫瘍は、レントゲン検査だけでは発見が難しいです(肝臓の中までみれないから、大きさだけなので)エコー検査をしますと、肝臓の中に腫瘤があるかをみることができますが、残念ながら、それがどういう腫瘍なのか、良性なのか悪性なのかが判定できません。
10歳以上の犬の70%、14歳以上の犬の100%で、肝臓の中に結節性過形成がみられるといわれています。エコー源性は様々(黒く見えたり、白くなったり、いろいろ)で、悪い腫瘍のようにみえたりします。良性の結節か、悪性のものかは、エコーでは、判別できないので、針生検をしなければなりません(鎮静もしくは、麻酔をかけます。)もし、それが、血管肉腫という血液の癌でしたら、針をさすのは、リスクが高いです。

肝臓の腫瘍の種類は
・肝細胞腺腫、肝細胞癌(限局した、つまり、1個の独立した、大きな腫瘤をつくる)
胆管癌
・肝臓カルチノイド(まれ)
・肝臓の血管肉腫
  脾臓などから転移したものが多い(予後は悪い)
・リンパ腫(80%が肝臓が腫大して大きくなりますが、20%は肝臓が大きくなりません)
・組織球肉腫(肝臓は腫大する場合あり)

先日、東京大学の付属動物病院(東大に動物病院があるなんて、驚かれる方が多いですが、そうです、あるんです)のセミナーにいってまいりまして、
そこで、超音波造影で悪性かどうかを診断する方法を最近試みているとのお話がありました。これは、造影モードのある高価な超音波診断装置がないとできないようです(普通の開業獣医さんには、ない代物です)
この、造影検査ですと、麻酔をかけることなく、エコーでみられた腫瘤が、ただの良性の結節なのか、悪性の肝細胞癌なのかを鑑別できるそうです(ただし、あまりにも大きな腫瘤では、みることができないようです)。
で、悪性が疑われた場合は、針生検をして、そして、手術のプラニングをたてるため(特に、肺に転移しているかどうかのチェック)CTスキャンの検査(全身麻酔)をする必要があるとのことでした。

このブログをお読みの方でしたら、理解してくださると思いますが、なかには、検査の必要をご説明しても、「検査したら治るんですか?」「検査したら、なにかわかるんですか?」ってお聞きになる方がいらっしゃいます。検査してすぐに治るんだったら、こんなすばらしいことはないですが、現実はそう、簡単にはいかないところが、獣医療の限界ですね。