犬の慢性肝炎
肝臓は体の中で一番大きな臓器で、肝臓全体の70%を失っても臨床症状を示しません。肝臓は腎臓と違って、細胞が再生するので、がんばって治療をすることができます。
慢性肝炎とは
肝臓がこわれたり(肝臓の細胞が持続的に、壊死したり、炎症細胞が浸潤する)、でも、肝細胞は再生するので、
そういう細胞の壊死、こわれたところは線維化、でも、再生したりすることもあって、
そんなプロセスをくりかえして、
最終的には、肝臓が機能を失ってしまう肝硬変に進行してしまう病気です。
1)原因は
微生物、毒物、薬剤、自己免疫性、品種関連性
特発性(原因不明)
慢性肝炎の犬の64%が特発性(原因不明)という報告があり、36%は、銅蓄積に関連しているそうです。
2)症状は
初期は無症状です。
中期から末期になると
黄疸(眼や歯茎が黄色くなる)
腹水(おなかに水がたまる)
肝性脳症(アンモニアが高くなる)
凝固異常(出血がとまりにくくなる)
食欲不振、嘔吐、下痢
3)診断
血液検査、エコー
レントゲン(肝臓の大きさが正常が小さい)
確定診断には肝臓の生検(全身麻酔で針をさして、組 織を病理検査する)
4)治療
肝臓の生検で、特発性の慢性肝炎と診断されたら、
ステロイドや免疫抑制剤の投与
ステロイドは、抗炎症作用と肝臓の線維化を防ぐからで す。(ステロイドは、必要なときに、正しくつかえば、魔法の薬なのです。でも、ドラマ「ワンスアポンアタイム」じゃないけれど、魔法には対価がある)
5)食事療法
あくまで、高アンモニアになってしまった、進行したわんちゃんだけです。肝臓がちょっと悪いからってタンパク制限するのは逆効果です。タンパクは肝臓の細胞の再生を助けます。シニアになったから、ネットやショップで「肝臓サポート」を気軽に買うのはやめましょうーー
アンモニアが高いわんちゃんだけ、肝性脳症を予防するためにタンパク制限食をあげてください。
銅やナトリウムも制限してください。
6)薬物投与
ウルソデキシコール酸
免疫調整作用、胆汁酸の希釈(流れをよくしてくれる)、抗酸化作用があるからです。
メトロニダゾール(少ない量で)
免疫調整作用
7)サプリ
シルマリンやビタミンEは肝臓の抗酸化
8)アンモニアが高いときは
抗菌剤(アモキシシリン、メトロニダゾール)
ラクツロース
9)腹水
利尿剤(スピロノラクトン)
効果なければ、もっと、強い利尿剤
肝臓の悪いわんこさん、がんばってお薬を飲まないといけないので、たいへんです。