甲状腺機能亢進症と慢性腎不全と高血圧
シニア猫さんになると、
甲状腺機能亢進症と
慢性腎不全がダブルにでてきたりすることが多いです。
こういうときにどうするのか?
という質問が、前回ご紹介した、ゴールドスタイン先生のセミナーでありました。
わたしも、常日頃そう、思っていましたが、
なぜ、悩むのかといいますと、
甲状腺機能亢進症になると、
よく食べるのです(これは、腎臓の悪い猫ちゃんにとっては、とっても大事なことなのです!)
でも、
軟便になったり、吐いたり、血圧があがったりと
いいことばかりではないので、
やはり治療をしたほうがいいのです。
血圧が上がるのがよくないことは、人間と同様で、猫ちゃんも高血圧による網膜症で失明したり、
そして、慢性腎不全になると、
体は、残った腎臓の機能を最大限に使うために、ネフロンの中の輸出細動脈を収縮させ、代償性の高血圧になります。
これが、さらに、腎不全を悪化させていきます。
ということで、甲状腺をこわすホルモン(メチマゾール)を飲んでもらうのですが、
甲状腺ホルモンというのは、
前述のように、食欲をださせてくれるホルモンでもあり、
また、糸球体濾過値(GFR)という腎機能を逆に高めてくれる作用があるので、これを減らす薬を飲むと、腎臓の悪化の指標になるBUNという尿素窒素が高くなってしまうのです。
そして、
血圧を下げる薬のアムロジピンという薬を飲ませると、
この薬は、全身性の高血圧の改善に有用なのですが、腎臓の糸球体の血液量を増やすため、輸入細動脈を広げるので、糸球体内圧は悪化するのです。
そのため、アムロジピン単独だけでなく、ACE阻害薬を一緒に使わないといけないのですが、
この薬は、体が脱水しているときは、逆にBUNを上げて、
ステージ4のクレアチニン5以上の猫ちゃんには投与しないほうがいいだろうといわれています。
ということで、薬には相反する作用があるから、
あちらたてば、こちらたたず、
治療は、
猫ちゃんの血液検査のかげんをみながら、
さじかげんを調節しないといけないのですね。
じゃあ、甲状腺ホルモンのための療法食y/dをあげれば、いいんじゃないかと思いきや
これは、その食事だけを食べてもらわないと効果があまりないのです。
ヨードをかなり減らした療法食なので、美味しくない、
腎臓の悪い猫ちゃんがバクバク食べるようなフードではないというのが難点です。
かといって、甲状腺摘出手術をしたり(上皮小体とい副甲状腺も一緒にとってしまうので、低カルシウム血症になったり、甲状腺機能低下症になる)、人間みたいに放射線で甲状腺をこわすといった手術は全身麻酔が必要なので、シニアの猫ちゃんには現実的な治療法ではないですね。
じゃあ、腎移植をするか?という選択肢もあるかもしれませんが、ほかの猫ちゃんから腎臓をもらう、
この手術は日本ではやっていないし、アメリカでも限られてた施設だけです。腎臓を提供した猫ちゃんは、尿路結石ができやすくなるという報告があるそうです。
人間みたいに、週3回人工透析をするという治療法も、猫ちゃんの慢性腎不全には行われていません(急性腎不全のみ)