発情中にワクチン接種をおすすめしない理由
当院では、メスのわんちゃんの発情中は、混合ワクチン接種をおすすめしておりません。
その理由は、
ワクチンをうつと、ワクチンは無毒化したウイルスを体にいれることによって、抗体をつくる免疫応答をおこすための予防接種です。なので、ワクチンをうつと一時的に、体の免疫が、その反応のほうに使われるので、ほかの病気に対する防御力が落ちます。
ということで、
発情中に、ワクチンをうつと、子宮の病気にかかっているわんちゃんの病気を悪化させる可能性があるからです。
では、子宮の病気には
子宮に液体がたまる病気があります。
一番、多いのが、子宮蓄膿症
子宮の中にばい菌がはいって、膿がたまる病気です
1)発生機序
子宮の中に細菌がはいると、細菌が内毒素であるエンドトキシンを産生します。
病気が進行しますと、腎不全、DICを起こして死に至ります。
なりやすい時期は
なぜか、12月と3月に多い印象がありますが、、
発情出血開始1−2か月の黄体退行期に発症します。
犬の黄体期は、妊娠の有無に関係なく2か月間続きます。その間、プロジェステロンが分泌されます。子宮はこのホルモンの影響を長期間うけ、子宮内膜が肥厚増殖します。
特に、シニアの犬のように何年にもわたって持続的にプロジェステロンの感作をうけた子宮は嚢胞性になります。そうなると、子宮内膜の状態は細菌感染が起こりやすい環境になります。
また、プロジェステロンは、子宮の筋肉を抑制し、子宮警官(出口のところ)を狭くしますので、
中にたまりやすくなります(子宮内腔の閉鎖)
プロジェステロン分泌期間は、白血球反応が抑制されますので、細菌感染しやすくなります。
2)原因となる細菌感染
大半は大腸菌です
つまり、感染経路は、肛門や外陰部周辺、膣内の細菌が子宮にはいってしまったためにおこるのです。
3)なりやすい年齢
シニアに多いですが、平均発症年齢は7-9歳です。発症率は15-25%といわれています
4)症状
食欲不振
発熱
多飲多尿
嘔吐
おなかがふくらむ
膣から血膿がでる
5)治療
卵巣・子宮摘出手術
手術したくない場合はホルモン剤の投与と抗生剤の投与
(リスク、再発あり)