ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

インスリン治療

犬が糖尿病なりますと、インスリンそのものがでないというのが原因ですので、犬の糖尿病にはインスリン治療が必ず必要となります。
血糖値を下げる薬は、自分の膵臓から無理にインスリンをださせようとする薬なので、効果はまったくなく、むしろ有害といわれています(膵臓をいたずらに刺激して、膵臓の再生を妨げるから)。インスリン治療を開始すると、膵臓を休ませてあげることにより、膵臓が再生して、自分でインスリンをつくることができるかもしれません。
また、糖尿病になりますと、どんどんやせてきて、白内障になり、網膜症で完全で失明します。脳梗塞で突然死するといわれています。食べても食べても、インスリンがないので、実にならない、どんどん、やせてくる、そして飢餓状態と、のどの渇き、だるくて動けなくなります。このような状態から、愛犬を助けてあげるのが、インスリン治療です。
毎日2回注射するのはたいへんですが、かわいい家族のためですから、がんばってください。手遅れになる前に、早期の治療が大切です。
費用も、ご自分でうつなら、インスリンと針だけですから、それほど高額にはなりません。
1か月で外食や飲み代2回分くらいの金額でしょうか、、


で、インスリンの種類はたくさんあり、
超速効型(人のみ)、速効型、中間型、混合型、持続型があります。どれを選ぶかは、ワンコさんの状態によります。
どのインスリンをどれくらい打つかっていうことで、検査しつつ決めていかないといけません。

そこで、入院が必要になるっということで
インスリン治療を躊躇される方が多いです。

当院では、日帰り入院で検査します。
高齢のワンコさんのストレスをできるだけ減らしてあげたいからです。長期間入院では、ストレスで血糖値が安定しない、食事をしないとインスリンがうてないという理由で、日帰りで何回か通院していただく形で、検査をしていきます。


インスリン治療をはじめた、くんくんちゃん

まずは日帰り入院で、朝、インスリンを注射してから、2.3時間ごとに耳から採血して血糖値を測定します。
そして、インスリンの種類と量をきめます。
最初の1週間は、血糖値を無理に正常値に近づけるような量はうちません。
急激な低血糖は、脳浮腫をおこし、生命の危険があるからです。
また、白内障になり、網膜症で失明しているような状態でしたら、無理に正常値まで下げる必要はないからです。

インスリンをうちはじめますと、グルコース中毒という体の状態を改善します。そして、カリウムが高くなっているのを改善します。
グルコース中毒の状態ですと、血糖値が下がりにくいですが、ここで、インスリンを増やすのは危険です。グルコース中毒の状態が改善されると、やがて、血糖値がさがってきます。血糖値が下がってくると、内因性のインスリン分泌が復活します。
血糖値が下がらないからといって、インスリンを増やしますと、実は低血糖が起きていて、これに対する生体の防御反応で血糖値が上昇するという「ソモギー効果」が起きている可能性があります。そこで、インスリンを増やしても、1日はインスリン不応性になっていますので、インスリンを増やすことは危険なのです。

くんくんちゃんは、高齢で小型犬ですので、ランタスという持続型のインスリンを選択しました。
小型犬はインスリンの作用時間が大型犬よりも短くなるので、持続型〜中間型を選択するようにといわれています。
ランタスは持続性ですので、ゆっくり下がり、ピークは6-8時間といわれています。ですので、食後の高血糖が抑制できないというデメリットがあります。このため、くんくんちゃんは、食事と一緒にアカルボースという薬を飲んでもらっています。

アメリカでは、犬用のインスリンがあり、猫用も開発中ということです。早く日本でも使えるようになるといいですね!
今は、ヒト用のインスリンを使わないといけないのです。体重が少ないと、量を決めるのが難しいです。


糖尿病治療をはじめたら、気をつけることは

・まず第一に低血糖に気を付ける
打つ前に尿試験紙でチェックする
(耳に針をさして検査する簡易検査キットがあります)

 猫は低血糖に耐えられますが、犬は症状が重くなるといわれています。

・糖尿病用の食事にする
 食後の急激な高血糖を予防する

・食事をしなかったら、インスリンをうたない

・発情後期の黄体期高血糖が原因の場合がありますので、避妊していなかったら、避妊手術をうける。

・散歩は食前にする。
運動量により血糖値変動が異なります。運動後に低血糖になります。

・体重の急激な増減をさける

・定期的にGA(糖化アルブミン)を測定してモニタリングする。過去2週間の血糖値を反映します。食事に関係なく採血して調べることができます。この数値を目安に糖尿病の管理を行います。

糖尿病の予後は血糖コントロールの程度や、基礎疾患や併発疾患の程度によります。老齢である場合、インスリン治療をして糖尿病をコントロールしていても、糖尿病以外の心不全、肺炎、腎不全、老衰などが最終的な死因になるといわれています。
ですが、毎日のインスリン治療は飼い主さんしかできないことで、家族への愛情です。
糖尿病をコントロールしてあげて、寿命をまっとうさせてあげてください。