ミネラルバランス
暑くなると、脱水して、ミネラルバランスが崩れます
。そうなると、気持ち悪くなって吐いたり、下痢したり、食欲不振になります。
体のミネラルバランス(ナトリウム、カリウム、クロール)は、下垂体と副腎と腎臓に関係があります。
下垂体からでるホルモンや、副腎皮質から分泌するミネラルコルチコイドが、腎臓でのナトリウムの再吸収やカリウムの排泄を調節し、生体内のバランスを維持しています。これらが分泌異常になったり、下垂体の病気になりますと、生体内の水分・電解質バランスが崩れ、血液中のナトリウム、カリウム濃度が変動します。そして、クロールはナトリウムの変動に比例して変化し、体の酸塩基平衡(体が酸性になったり、あるかり性になること)の影響も受けます。
体のミネラルバランスを血液検査で調べることとで病気の発見につながります。
①ナトリウムが高値になる原因
・副腎皮質機能亢進症
・副腎皮質腫瘍
・原発性高アルドステロン症(副腎の過形成や腫瘍)
・中枢性尿崩症(やたらとそそうします)
・慢性腎不全の末期
・熱射病、発熱、脱水
・嘔吐、下痢、熱傷、胸水、腹水、
・糖尿病
・代謝性アルカローシス
②ナトリウムが低値になる原因
副腎皮質機能低下症
糖尿病(浸透圧利尿前)
肝不全の末期(低アルブミン)
うっ血性心不全(循環不全)
体はつねにナトリウムの細胞内外の補正を行っていますので、このナトリウムのバランスが大幅に崩れるときは体の中で、ミネラルバランスの平衡を保てないほど、生命の危機にさらされている可能性があります。
③カリウムが高値になる原因
・副腎皮質機能低下症
アルドステロン分泌が低下するので、腎臓でのナトリウムの再吸収、カリウムの排泄が低下する
・慢性腎不全の末期(おしっこがでない)
・カリウム保持性利尿薬
・血小板増加症や溶血
・腫瘍崩壊症候群
・消化管疾患(サルモネラ症、鞭虫症)
・代謝性アシドーシス
・筋障害
④カリウムが低値になる原因
・副腎皮質機能亢進症
・慢性腎不全
・利尿薬
・インスリン
・薬剤(アムホテリシンB,ペニシリンの投与)
・嘔吐、食欲不振
・尿細管性アシドーシス(カリウムの排泄が多くなるため)
⑤クロールが高値になる原因
・原発性高アルドステロン症
・生理食塩水の点滴
・食塩の過剰摂取
・水分の喪失、脱水
・慢性の呼吸性アルカローシス(いつも、ゼコゼコしているワンコ)
・浸透圧性下剤(電解質よりも水分が失われる下痢)
・腎尿細管性アシドーシス
⑥クロールが低値になる原因
・副腎皮質機能低下症
・嘔吐(胃酸を失うため)
・高脂血症や高蛋白血症で偽性低クロール血症
・利尿剤
・代謝性アルカローシス
・水分過剰(うっ血性心不全、肝不全、ネフローゼ 症候群)
・糖尿病の末期のケトアシドーシス
このように、ミネラルバランスが血液検査で明らかに異常値を示す場合、重篤な病気にかかっている場合があります。
愚痴になりますが、飼い主様のなかには「検査したら、なにかわかるのですか?」「検査したくないけれど、薬をだしてほしい。」とおっしゃる方がいらっしゃいます。お気持ちはわかりますが、検査していろいろなデータをみて、病気を探って、お薬を処方するのです。オリンピックのバレーボールだって、データ分析をして勝利を導きましたね。動物医療も、同じで検査データの積み上げから病気を探るものだと思います。動物の外観をみただけで病気がわかって、適切なお薬を処方できるような魔力があればいいですねえーー