ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

犬の肥満細胞腫のグレード

腫瘍ができたときに、どのくらい悪いものか、を判断するのが、グレードです。

肥満細胞腫のなかで、皮ふにできた肥満細胞腫にはグレードがあります。口の中、内臓、皮下、筋間、陰嚢などの肥満細胞腫にはグレードが適応しないということです。
で、このグレードは、見た目では判定できません。外科的に、肥満細胞腫という腫瘍を切除して、病理検査をして細胞分裂の度合いや異型度などなどを病理診断するのです。
ですが、このグレードというのが曲者のようで、、
アメリカの実験データでは、10人の病理医にそれぞれ同じ検体を判定してもらった結果、同意率60%くらいで、しかもグレード1とグレード3(悪性度が高い)のが逆転する例も多かったという結果だそうです。で、日本の場合は、同意率44%で、5例に1例が異なるっという結果だそうです。つまり、このグレード判定は、主観的でグレーゾーンもあるということです。より客観的基準は、分子生物学的なもので、増殖マーカーをみる方法です。核分裂像の数によって、予後が左右されます(つまり、腫瘍細胞の増殖が早いと、急速に腫瘍が大きくなり、リンパ節にとび、内臓に転移しやすいので、予後が悪くなるからです)

このグレード判定がなぜ、必要かといいますと、
外科的に切除したあとに、化学療法をするかどうかを決める材料だからです。
化学療法は、抗がん剤ですので、正常な細胞も傷つけ、副作用も強いです。骨髄が抑制されて、貧血や白血球がへって感染しやすくなり、下痢や嘔吐により、腸管からバイ菌がはいって、敗血症で死亡するなど、キケンなケースもあります。

抗がん剤を適応するものは、
グレード3(悪性度が高い)
グレード3に近いグレード2
リンパ節や内臓に転移している
外科的切除ができないくらい大きい
外科的マージンがとれないくらい大きい
化学療法をして、腫瘍を小さくしてから切除する術前化学療法

ということです。グレード1で完全切除していて、転移が認められなかった場合は、あえて化学療法をしなくてもよいということですね。