ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

飲む抗がん剤パラデイア

分子標的薬という画期的ながんの治療薬がありますが、
動物用の薬も発売されています。
肥満細胞腫という主に皮膚にできてしまう皮膚のがん(内臓に転移します。猫は内臓が多いです)がありますが、最初はこの肥満細胞腫のための治療薬でした。
最近は、肥満細胞腫たけではくて、ほかのがんにも有効であるといわれています。
肺や肝臓にできてしまった固形ガン、
悪性度の強い肛門嚢アポクリン腺癌
骨肉腫
膀胱の移行上皮癌
乳腺癌
前立腺
扁平上皮癌
メラノーマ
線維肉腫
腺癌


これらにも有効ということで、

おうちで、2日に一回、飲んでもらう
飲む抗がん剤です。

先日、酪農大学の腫瘍の先生の
パラデイアのセミナーをWEB配信で、ききました(セミナー会場が北海道なので)。
わざわざでかけなくても、WEB配信してくれるのは、本当に便利で、出不精な私には、ありがたいことです。

そこで、
パラデイアは発売されて3年たっていますので、
症例紹介と副作用のお話しでした。

どんな薬にも副作用はあります
副作用と、でも、続けていくメリットをはかりにかけて考えていかないといけません。

昔は
「がん細胞の縮小なければ、延命なし」ということで、がんがん、がん細胞をたたくというのが治療目的でしたが、
今は
癌細胞が致死的に増殖しないよう、がん細胞の増殖をおさえて、安定化させることも、延命につながるということのようです。

つまり、
癌細胞がゼロにならなくても
たとえ、がんが小さくならなくても
これ以上増えないで、維持できれば、
増殖抑制による延命効果が期待できるので
薬の効果はあるという
ことです。

パラデイアは、この考え方にみあった、新しい薬なのです。

パラデイアは、肥満細胞腫の増殖を抑制する働きがありますが、
そのほかのがんに対しては、
血管新生抑制という兵糧攻めという形で
効果があるのです。

つまり、

癌はゼロにならないけれど、兵糧攻めにすることで、増殖を抑制あるいは、大きな癌だったら、縮小することができるということです。(緩和ということですね!!)


でも、
問題点があります

抗がん剤なら、一定期間がんばって、副作用に耐えて
治療を続けますが、

パラデイアは、ずーっと飲み続けないといけないのです。
終わりのなりガンとの闘いということです。
飲むのをやめると、
癌細胞がまた、増えて、勢いを増します
でも、
パラデイアは
消化器障害(下痢、嘔吐)
肝臓の障害
膀胱炎
膵炎
跛行
白血球減少
貧血
など
いろんな副作用が惹起されます。

しかも、

皮肉なことに、飲み続けていくと、副作用の頻度が増すそうです。(副作用が強い症例のほうが、効果がみえたそうです。)

でも、

休薬すると、
癌が増える

癌とのチキンレース(根競べ)のようです。

なんだか、心が折れるような
癌との闘いですね。
でも、がんと闘う手立てがあるのなら、
なんとか、愛犬愛猫とともにがんばりたいと思う
飼い主さんの願いをかなえてくれるのかもしれません。

なぜ、副作用がでるのか

それは、
癌細胞は大きくなるときに、血管に新しい血管を伸ばして、自分の栄養をとろうとするのです、でも、その血管は正常な血管よりも、もろくて(内皮細胞だけ)壊れやすいのです。
そこにパラデイアが血管新生を阻害する効果を発揮するので、
うまくすれば、血管がこわれて、
癌細胞に栄養がいかなくなって、がん細胞が餓死(壊死)して小さくなるのです。

ところが、
癌細胞だけでなく、体の自己修復機能まで、血管新生を抑えるため、抑制されてしまいます。
炎症がおこったときに、パラデイアを飲んでいると、
それを治す力が阻害されるので、重篤化してしまう

だから、

副作用がでたら
パラデイアは休薬しないといけないのです。
再開するときは、
用量や投薬回数を減らすことを考えないといけないのです。



市販のがんのサプリよりも、エビデンスがあるから、お金かかるけれど、、試してみる価値はあると思います。