ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

犬の皮膚肥満細胞腫

肥満細胞腫(ヒトにはありません)は、犬の皮膚の腫瘍の20%を占めるといわれています。老齢のワンコさんに多く、特にボクサー、ボストン・テリア、パグさんなどに多いです。(ネコには、あまりなく、良性が多い)グレードによって、予後は様々です。

グレード1で高分化型(つまり、悪性度が低い)
 臨床ステージⅠ

ひとつだけ(孤立的)、成長速度は遅く、皮膚の結節のような形です。中には、皮膚に潰瘍をおこすこともあります。肥満細胞からヒスタミンが放出され、それによって、病変の大きさが変動したり赤くなったり「炎症」のようにみえたりします。

(予後)
外科的に完全に切除しても、再発率は、25%
生存率4年が93%

②グレード2(中間グレード)
臨床ステージ Ⅱ、Ⅲ

皮膚の中に浸潤し、境界不明瞭な軟部組織腫瘤になります。また、周囲の皮膚リンパ節を通して腫瘍が広がっていきます。
この中間グレードが多いといわれています。

(予後)
外科的に完全切除した場合の、再発率44%
生存率4年が45%(もっと、生存率が長いという説もあります)

(治療)
外科的切除と、リンパ節の放射線治療±化学療法など

③グレード3(低分化型)
臨床ステージⅢ、Ⅳ

悪性度が高いため、外科的にとりにくく、また、転移しやすいです。(肺はまれ。脾臓、肝臓、腎臓に転移)腫瘍がヒスタミンを放出するので、消化管潰瘍になりやすく、嘔吐、食欲不振、下血、貧血を引き起こします。

(予後)
外科的に完全切除しても、再発率76%
生存率4年が6%

(治療)
外科的切除、化学療法、放射線療法

化学療法の効果は賛否両論で、確定したプロトコールはないようです。化学療法は細胞毒性がありますので、副作用も強く、外科的に完全切除したもので、グレードの低い腫瘍に対しては、行わない場合もあります。免疫療法や、遺伝子治療、脱イオン水注入という方法もあるそうです。

アメリカのカリフォルニアの教授のセミナーで聞いたのですが、アメリカでは、もう中間グレードという分類がないとのことです。低グレード(悪性度が低い)ものが90%で、残りの10%が高グレード(悪性度が高く、転移しやすい)だということです。