ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

心臓の薬

シニアのワンコさんは、たいてい、心臓の弁膜症になるといわれています(ネコさんは、慢性腎不全になりやすいです)。
ワンコさんの場合、たいていが、心臓の左心室にある弁(僧帽弁)がきちんと閉まらないため、血液が左心房に逆流してしまう病気(僧帽弁閉鎖不全症)が一般的に多いです。
とくに、キャバリア(100%)、マルチーズ、シーズ、ポメ、プードル、チワワ、柴犬に多いといわれています。
この弁膜症にかかりますと、心臓は血液を全身におくるポンプの役割と果たしていますが、弁(ふた)がきちんとしまらないと、水道の水漏れと同じように、ちゃんと必要な量が全身循環に送れなくなるということです。その結果、循環が悪くなると、心臓の手前にある肺(つまり、血液に酸素をとりこむのが肺の役割なので、酸素を含んだ動脈血)が、道路で先が渋滞すると、つまるのと同じように、肺うっ血がおこします。
そして、その状態が続きますと、心不全を起こし、肺水腫などの呼吸困難や、心臓が大きくなって、気管を圧迫して咳がでたり(のどがつまったようなしぐさ)します。進行しますと、運動できなくなったり、失神したり、チアノーゼ(舌が紫色になる)をおこしたり、急死することもあります。
この病気の発生初期は まったく症状がなく、聴診すると、心臓の雑音が聞こえます。徐々に進行する病気です。人間ですと、ペースメーカーをいれたりと、人工弁をつけたりと、高度な治療がありますが、犬の場合は、そのような治療は行っておりません(大学病院の研究レベルです)。ですので、悪くなった、心臓をこれ以上悪化させないように、症状を緩和して、心臓の負担を軽くするようなお薬を飲んで、生涯にわたって投薬が必要となります。
心臓の薬はいろいろあります。心臓の薬を飲み始めたら、きちんと飲みつづけないと、逆に心臓に負担がかかる場合があります。(いきなり、薬をきるのは、やめましょう)

1)ベーシックな、お薬
 ACE阻害薬(動物薬が各メーカーからだされています)
  心臓が悪くなると、最初に処方するお薬です。これは、アンジオテンシン変換酵素阻害薬というお薬で、血管拡張薬です。心臓が悪くなりますと、体は血管を収縮したりして、血圧を保ちます。慢性心不全になりますと、血管が収縮することにより(つまり、管が狭くなると、そこに血液を送るには、ポンプは力をいれて送らないといけませんから)血液を心臓が送るのが、より労力がかかるようになります。このため、血管拡張薬を用いることにより、心臓に帰ってくる血液を減らしたり(うっ血ととるため)、血液を全身に流れやすくします(心臓の負担を減らす)。この薬は、心筋の肥大を抑制し、心臓保護作用や腎臓保護作用もあります。下痢、低血圧です。


2)昔からあるお薬(強心剤)
 ジゴキシン
心臓のカルシウムを細胞内からでていくのを抑制するお薬です。これにより、心筋の収縮力を増加させ、心拍数を下げます。交換神経を抑制し、不整脈を抑制します。副作用は、薬の効くマージンが狭いので、毒性がでやすいとおいうことです。脂肪にとけないので、肥満したワンコさんだと過剰になる可能性があります。(本当の心不全のワンコは太れないといいますが)高カリウム血症、高カルシウム血症になりやすいです。
この薬は、つまり、平たく言えば、心臓にもっと働けと、ムチをうつ薬ってことです。そして、心筋細胞内にカルシウムが増えすぎますと、不整脈を起こして、突然死する可能性があります。

3)最新の動物薬(強心剤)
ビモベンダン
 カルシウム感受性増強薬
心臓病になりますと、体の中は代償機能といって、それを補うため、いろいろな防御反応がおきます。ですが、長期的には代償できず、心不全になります(国の財政と同じでしょうかね、、ギリシアみたいに、あれこれ策をろうしても、最後は破たんするってことです)
心不全になりますと、強心剤や利尿剤や血管拡張薬を組み合わせて薬を飲みますが、ジゴキシンにように、疲れた心臓にムチを打ち続けるのもよくありません。
ピモベンダンは、強心剤ですが、ジゴキシンと違って、
心臓にあまり、鞭をうつことなく、強心作用を発揮し、血管を拡張する効果があるといわれています。
これは、心筋を収縮させる働きのあるカルシウムを増やすのではなく、心臓のカルシウム感受性を増強することによって、心臓の収縮力をあげ、心拍数を下げます。
この薬は、食事の1時間前に投与しないといけません。(食事と一緒だと吸収が悪いためです)
副作用は、頻脈、嘔吐、心臓の雑音が大きくなる(用量をさげましょう)

4)カルシウム拮抗薬
 アムロジビン
ネコちゃんの高血圧に用いる薬です。(甲状腺機能亢進症など)血管拡張作用があります
この薬は、歯肉の過形成をおこすといわれています。

5)利尿薬
尿の量を増やして、体内にある余分な水やナトリウムの排泄を促す薬です。
代償機能で拡大した心臓により、長期にわたり心不全の症状をだしたときに必要となります。特に肺に水がたまったり(肺水腫)、おなかに水がたまったり(腹水)、胸に水がたまったり(胸水)、四肢のむくみ(浮腫)がみられたときのみ、必要となります。副作用は低カリウム血症と腎臓への負担です。

昼よりも夜のほうが咳が多くなります。原因は、昼間は立位で心臓や肺が高い位置にあるので、血液は四肢(前肢、後ろ足)など、末梢に分布していますが、夜は横臥位の状態が多く(ふせっていたり、横に寝ている)心臓・肺の位置が低くくなるため、末梢に分布していた毛月が肺に分布するようになります。そのため、昼よりも夜のほうが咳がでることが多くなります。

心臓の悪いワンコさんは、お食事にも気をつけてあげましょう。ナトリウムを多くとらないようにしましょう(水を保持する電解質だから)心不全のワンコさんは、体がむくみやすいので、イカ、チーズ、カマボコ、ソーセージ、食パンなどの人間の食べ物はナトリウムが多いので、あげないようにしましょう。
ビタミンB群は、心不全で使用する利尿剤でビタミンが尿に多く排泄されることを防いでくれます。また、タウリンカルニチンは正常な心筋の機能を維持してくれることに役立つといわれています。
心不全の末期ですと、過剰な運動をさけたほうがよいでしょう。