ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

頭が傾く、目がまわる

老犬になって突然発症する病気に
末梢性前庭障害という病気があります。

これは、耳の奥の内耳に、
平衡感覚をつかさどる前庭というところがあるのですが、
これが障害とうけて発症する病気です。

そのほか、中枢性といって、小脳・脳幹部の障害によって発生するものあります。

1)この病気になる原因は


① 甲状腺機能低下症
シニアになるとよくなるのが、
甲状腺機能低下症(犬)になるのですが、
この病気にかかると、内耳道の神経の周囲にムチン様物質が蓄積して神経を圧迫することが原因として考えられています。

②中耳炎・内耳炎
③耳に腫瘍
④耳にポリープ
⑤中毒
⑥特発性(原因不明ということです)
⑦先天性前庭症候群

過去の報告では、
末梢性前庭疾患の83頭の犬で
49%が中耳炎・内耳炎
39%が、特発性


2)末梢性か、中枢性かをみわけるのは、
MRI検査が有効ですが、

その検査をした85頭の報告では、
 27頭が末梢性
 37頭が中枢性
 21頭が奇形

末梢性のうち41%が中耳炎。内耳炎
      26%中耳の腫瘍
      26%異常なし

だそうです。

ということで、

耳が悪くなって、
この病気になってしまうケースが多いということですね


3)症状は

①首やからだが斜めに傾く(斜頸)。
②同じ場所を同一方向にぐるぐる回って歩き、食事ができない、水がのめない
③目がまわるので、吐く、涎がでる
④目を見ると、こきざみに一定のリズムでキョロキョロ動かします。左右に動く水平眼振があります。
 垂直に目が動いている垂直眼振の場合、中枢性の可能性がります。


4)検査
 レントゲン
 鼓室胞の造影検査
 MRI,CT

5)治療
① 原因が、内耳・中耳炎の場合はその治療
 抗生剤などの投与
 内科的治療に反応しない場合は、麻酔をかけて、鼓室胞切開

② 甲状腺ホルモンを測定して低下症であれば、その治療
 
③ 特発性というシニアワンコの病気では、2,3日でほぼ自然回復し、わずかに捻転斜頸が残る可能性があります。(目が回って食べれないので、自然治癒を座して待つというよりは、、嘔吐をおさえる治療、栄養補給が必要です)

④耳の腫瘍
 外科的切除が可能かどうか、、、


ということで、夏になると外耳炎になる犬さんが増えています。
放置すると、中耳炎になっていき、治りにくくなります。
そして、内耳まで細菌感染がおき、内耳炎になると
この病気を発症する可能性があります。
たかが、耳掃除とあなどるなかれ、、、


耳毛をぬいて、耳の中を清潔にすることも耳ケアのひとつですが、抜くときに使うカンシで耳を傷つけることもありますので、注意が必要です