ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

麻酔のリスク

昨日は、アメリカの大学で麻酔の教授(ドクターKO教授)のセミナーがあったので、いってまいりました。

アメリカでは、日本にない、安全性の高い麻酔薬が認可されて、普及しているとのことで、早く日本でも使えるようになってほしいものです。
薬もどんどん、進化していきますね。

ちょっと、ショックな数字をご紹介します。

英国では、犬98026頭、猫79178頭の外科手術をしていて、
犬の死亡例の50%、猫の死亡例の60%以上が
回復期あるいは術後24時間以内になくなっているとのいこと。
そして、

なんと、

麻酔死亡率は、1000頭に1頭の割合だそうです。
人間は、1万人に一人
ウマとウサギは、100頭に1頭
麻酔で亡くなっているという統計をご紹介してくれました。

麻酔事故の原因は、

麻酔薬にたいしてアレルギーがあった、
心臓や腎臓の悪いハイリスクの動物であった、
麻酔中に血圧が急激に低下して、脳や臓器への血液還流が滞ってしまった。
膵炎があって、脂肪で溶解している麻酔薬があわなかった
人間の病院と違って、術後のモニタリングが十分にできない(なにしろ、モニターは200万円近くしますから)
人間の病院と違って、外科手術のときに麻酔医が常にいるわけではない(通常は、術者と助手のみが獣医で、麻酔医が常時いる病院は、大きな病院に限られますね)という人間と、獣医療のレベルの違い
2キロとか3キロといった小型犬や猫に対して、麻酔の調整が難しい、
人間の場合でしたら、術前チェックのため、CTやMRIで精査してから、麻酔をかけて外科手術をするのに対して、犬猫は、麻酔しないとCTなどの術前チェックができない、本末転倒になっていること、
人間は全身麻酔でなくて外科手術を行うことが多いが、動物の場合、鎮静しないと、無理なので、全身麻酔が常に必要になる(みんなで押さえつけて、局所麻酔だけで手術するっというのは、まるで拷問のようになるかも)
人間と違って輸血が簡単ではないため、輸血しながらの手術ができないという獣医療の限界(動物の場合、その都度、血液をほかの動物から調達しないといけません)



などなど、、
だと思います。

当院では術中に麻酔で亡くなるという事故は10年間一度もありませんが、
やはり、麻酔というのは
死ぬ一歩手前のような状態で鎮静して、鎮痛をしつつ、
おなかの中をいじるのですから、
リスクがまったくない外科手術というのはないのだなと思います。
今回のセミナーで術前、術中、術後の鎮痛がとても大事であることをいっていました。
術後の鎮痛も、アメリカでは日本にないいい薬があるようで、早く日本でも発売してほしいものです。
避妊手術は、その仔にとって一生に一回だけの試練ですが、動物になるべく痛みをあたえないよう、これからも勉強していきたいと思います。


早く秋になってほしい、
暑い、、
ちなみにアンデイくんは、過去4回麻酔かけました。もちろん、生きています、今度MRI検査に行きます。