ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

ダックスさんの椎間板ヘルニア

ダックスさんに多い椎間板ヘルニアですが、

先日、アメリカのジョージア大学の神経学の権威の先生のセミナーでの話をご紹介します。

ダックスさん(軟骨異栄養性犬種)は、生後6カ月から椎間板の変性が始まるそうです。
そして、1歳までに75%の椎間板が変性します。
2歳までに90%の椎間板が変性します。

どのように変性するかといいますと、
ダックスさんは、ハンセンⅠ型で

椎間板ヘルニアの発症する原因は、、、

①椎間板の変性がおこる
 水分とプロテオグリカンの量が減っていく
 コラーゲンが増加する
 
椎間板の中の髄核は、衝撃を吸収するゲル状の物質なのですが、水分が減って、硬いコラーゲンが増えていくと、軟らかいゲルから石灰化(軟骨化生)していきます。

②やがて、椎間板の中の髄核というものが、外の壁(繊維輪)の断裂部分から、神経の走っている脊柱管内に侵入する。

③すると、突然の痛みがおきます(急性発症)

④椎間板が脊柱管に逸脱すると、、神経の物理的損傷、神経の伝導遮断、出血がおきます。

⑤さらに、脊髄の震とう圧迫が進みますと、12時間後に二次性の脊髄損傷が起きます。

⑥神経原生ショック
 全身性の低血圧
 各種フリーラジカルが増え
 電解質の変化
 各種興奮毒
などなど
 
その傷害の程度はグレードで分かれます。
椎間板ヘルニアのグレード}
グレード1 疼痛のみ(歩ける)神経学的欠如なし
グレード2 歩行可能ですが、ナックリングなど神経学的欠如が軽度にある
グレード3 なんとか歩行できるけれど、不全対麻痺
グレード4 歩行できない。深部痛覚あり
グレード5 深部痛覚なし

ハンセンⅠ型の椎間板ヘルニアの症状(つまり、ダックスさんのような小型犬)
・突然発症する
・胸腰椎のヘルニアが多い(一番、可動性が大きいから(T3-L3が84%)


治療は

 内科的療法(6週間かかります)
  4-6週間のケージレスト(安静にすごす)
  痛みをとるためのステロイドなど内服

  軽度なグレード1は内科的療法でおちつきます。  内科的療法の場合は、再発率50%

 外科的治療
  再発率が内科的療法よりも低い(20%未満)
  グレード4と5は手術が必要
  グレード5(深部痛覚がない)場合は、24時間以内に手術をしないと、成功率は50-60%、48時間経過した場合は、手術して回復する可能性は5%以下

では、G1からG4の場合の治療は、、
  G1、G2では手術はおすすめしません。 
  G2-G3の間の場合は、

   内科的治療では、再発する可能性があります。手術をした場合は、成功率は発症数週間以内であれば、90%の成功率です。
  再発を繰り返し、時間がたつと、70%の成功率に下がるとのことでした。