ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

血清総胆汁酸

フィラリアのシーズンになりました。フィラリアにかかっているかどうか(去年の予防の成果)をチェックするために、採血して検査します。フィラリア陽性のまま、フィラリア駆除薬を飲むと、ショックが起きたりすることもありますので、検査してから飲むのが、安全です。
当院では、シニアのワンコさんには、フィラリアの血液検査とご一緒に、腎臓、肝臓といった生化学検査と貧血がないか、感染症がないか(白血球の数)をチェックすることをおすすめしております。

そういったルーテインの血液検査で肝臓の数値が悪かった場合、次の精密検査をしたほうがよいです。そのひとつに血清総胆汁酸の検査です。

①血清総胆汁酸濃度の検査の目的
肝臓の細胞の機能異常と門脈(肝臓に栄養を運ぶ血管)循環異常を検出する検査です。

②胆汁酸とは
胆汁酸は、胆汁の主成分のひとつです。
肝臓の細胞で、コレステロールから一次胆汁酸が合成されます。この一次胆汁酸に、いろいろなアミノ酸が肝臓でくっついた(抱合される)ものが胆汁酸です。そして、肝臓で作られた胆汁酸は、胆嚢に貯留され、濃縮されます。そして、食事をすると胆嚢から胆管をとおって、十二指腸に放出されます。

③胆汁酸の役割
小腸での脂肪の消化と吸収を助けます

④胆汁酸のゆくえ
80%の胆汁酸は、回腸で吸収され、肝臓にもどります。
残り2-5%の胆汁酸は、糞便中に排泄されます。


{血清総胆汁酸の測定すると、、、}
食後と食前の胆汁酸の濃度を血液検査で測定します。
正常な犬猫さんで、食後の胆汁酸濃度は空腹時の3-4倍に達します。
空腹時、食後どちらも胆汁酸濃度が異常に高い場合は、肝細胞から胆汁中への胆汁酸の分泌障害、胆外胆道系で、胆汁の流れが悪くなっている(通過障害)、腸管から肝臓への門脈という血流の異常、門脈から肝細胞へのとりこみ障害がおきていることがわかります。

・検査方法
 ①12時間絶食する
 ②朝、病院で血液検査をする(空腹時の総胆汁酸を測定する)
 ③通常の脂肪含有量を含む食事を少量食べさせる
 (帰宅する)
 ④食後の2時間後、血液検査(食後の総胆汁酸の測定)

・検査結果
 正常値
  空腹時 5μmol/L以下
  食後  15μmol/L以下

・空腹時も高く、食後に基準の10-20倍高い場合は、門脈体循環シャントを疑います。つまり、肝臓に栄養をはこぶ門脈という血管がおかしいということです。