肝臓の酵素
一般的な血液検査でみるもので、肝臓の酵素があります。これは、肝臓の疾患やその他の病気が原因で続発性の肝障害を示唆するものです。基準値の2倍以上の上昇のときに、なんらかの病変を疑いますが、基準値を少しオーバーしたくらいでしたら、それほど深刻にならなくてもよい場合もあります(次回のモニタリングを続けていきましょう)
1)ALT(アラニンアミノトランスフェアーゼ)
この酵素は、肝臓の細胞の障害(つまり、肝臓の細胞の中にある酵素なので、これが血液中にでるということは、肝臓の細胞が壊れているということです)と修復に対して感受性の高い指標ですが、その他の全身性疾患でも上昇します。これのみが上昇している場合、必ずしも肝臓の障害とは限りません。
上昇する原因
・薬物(バルビツレート、グルココルチコイド)
・原発性の肝障害
・局所の炎症、腫瘍性疾患、糖尿病、内分泌障害、副腎皮質機能亢進症、免疫介在性溶血性貧血、敗血症などからくる、続発性の肝障害
2)AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
この酵素は、肝臓の細胞の傷害と修復に対して感受性が比較的高い指標です(つまり、ALTのほうが、ASTよりも、肝臓の細胞のダメージに強く反応するということです)
ALTのみが上昇しているときよりも、ALTとASTが両方上昇している場合は、より重度の肝臓の示唆します。
ASTは、骨格筋細胞と肝臓の細胞にある酵素ですので、激しい筋肉の損傷でも上昇します。
上昇する原因
・肝臓の損傷(この場合、ALTも上昇します)
・筋肉の損傷(ALTは上昇せず、CKが上昇)
ALTだけ上昇ーー肝臓以外の原因もありや?
ALTとASTが上昇ーー肝臓の重度のダメージありや?
ということです。ASTのほうが半減期が短いので、早く下降するので、ASTが著しく増加して、黄疸もでている場合、かなり重度の肝障害を示唆します。
慢性の肝臓の疾患になりますと、末期(肝硬変)に近付くと、血清のALT,ASTが正常値、あるいは軽度の上昇、逆に低くなったりします。
3)ALP(アルカリフォスターゼ)
胆汁うったい疾患に対して感度の高い指標です。
骨の成長でも反応しますので、成長期の若い子犬は、高くなります。
ALPは、膜結合酵素なので、さまざまな組織に存在します。ALPは、高ビリルビン血症(黄疸)の生じる前に起こります。犬は、ALPの産生能力が高く、半減期は3日なので、著しく増加します。猫さんは、めったに上昇しないので、このALPが高いことは、かなり危険な状態を示唆します。
上昇する原因
・胆管閉塞、胆管炎、胆石
・膵炎
・原発性肝疾患
・薬物(抗けいれん薬、グルココチルコイド)
・骨の腫瘍
・糖尿病
・骨折
・骨髄炎
・上皮小体機能亢進症(高CA血症)
GGTは、骨の成長に上昇しないので、GGTが上昇しているほうが、ALPよりも、胆汁っ滞を示唆します。
血液検査は、いろいろなデータを複合して、体の中に起きている異常を探るものです。
また、採血前に食事を食べているかどうかも、検査数値を左右します。