鉄欠乏性貧血
貧血とは
末梢血液の中の赤血球、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット亜値のどれか、あるいは、全部が基準値を下回った数値です
当院では、フィラリアの血液検査と一緒に、この検査も同時に行っております。
貧血というと、鉄が足りないから鉄分を飲まないと
と思われますが、
必ずしもそういうことではありません。
鉄は、赤血球ヘモグロビンの主たる構成成分です。貧血でも、鉄分が不足しているわけではない場合もあります。
鉄分が必要な貧血は
鉄欠乏性貧血
腎臓が悪くなったときの腎性貧血時のエリスロポエチン療法中でう(造血剤の注射をしたときに、肝心の材料がないと、つくれませんよね)
それ以外の貧血の場合に、鉄分の注射(痛いし、副作用あり)をするのは慎重にしないといけません。というのは、鉄剤の注射は、鉄過剰症となり臓器障害を引き起こす可能性があるからです。
では、
1)鉄が欠乏する理由は
①鉄分のはいった食事が足りない
鉄の体内への取り込みは、食事中の鉄が十二指腸と空調の一部から吸収されます。
腸の細胞にはいった鉄は、腸の上皮細胞内に一時的に貯蔵されたあと、体内の鉄貯蔵量に応じて血液中に移行します。
食事中に必要な鉄の量は
1日あたり
成犬 30㎎/㎏
洋犬・幼猫 、成猫 80㎎/㎏
②体の中で鉄分の要求量が多くなる
食事から得た鉄分はいったん、細胞内に貯蔵されます。
体内の鉄貯蔵量の減少や赤血球産生が亢進するなど鉄の要求量が増加すると、腸の上皮から血液中に鉄が移行します。
つまり、どこかで、出血していると、鉄を失いますよね
消化管腫瘍
消化管潰瘍
消化管内寄生虫
炎症性腸炎
血小板減少症
尿路出血
尿毒症(自分の血液を壊してしまう)
凝固因子欠乏
2)症状
徐々に進行するので、体が低酸素状態になれていくので、元気や食欲の減少はすぐにはおきないため、重度の貧血になってはじめて、気づきます。
3)診断
血液検査で鉄パラメーターを調べる
①血清鉄(血液中で輸送タンパクと結合した状態のことです)
②トランスフェリン飽和度
鉄が血液中にでてくると、鉄の輸送タンパクであるアポチオランスフェリンと結合し、トランスフェリンを形成します。
通常では、血液中のトランスフェリンの約3分の1に鉄が結合しているので、正常値は25-50%です。ですが、鉄が不足していると、鉄がくっつく量がへるので、トランスフェリンが余っている状態になるので、飽和度が20%以下に低下します。
③ TIBC
鉄総合結合能です
人間では鉄欠乏性貧血では、上昇しますが、犬猫はあまり増加しないので診断意義は低いといわれています。
④血液検査で
MCV(平均赤血球容積)の減少
(つまり、鉄が少なければ、材料が足りないので、節約して小さな赤血球をつくりますよね
MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)の減少
つまり、小球性低色素性貧血です
⑤出血しているため、反応性の血小板増加症を伴う
4)治療
鉄分の補給
原因の治療
出血をとめる
重度の場合は輸血(血液は売っていないので、確保がたいへんです)