ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

食欲にムラがあるーーー 慢性膵炎の疑い

先日、夜のセミナーにいってまいりました
アメリカのテキサス大学の消化器のステイナー教授のセミナーで「慢性膵炎の新しい展望」でした

セミナーでは、慢性膵炎は、従来考えれていたよりも、実はもっと多い頻度であるといわれているということで、
膵炎になりやすい犬種は
Mシュナウザーとイングリッシュコッカスパニエルです。

1)慢性膵炎の症状は
・無症状の子もいます
・食べたり食べなかったり食欲にムラがあるのは、実は慢性膵炎の可能性があります(見かけ上は、無症状)
・よく寝ている
・食欲不振
・重度になると、嘔吐、腹部不快感、糖尿病
・軟便
・体重減少


2)急性膵炎ですと、
 吐いたり
 下痢したり
 おなかがいたい(口では言わないから、わかりにくいのですが、人間では95%が腹痛を訴えます)
 食欲がなくなる

ということで、すぐに治療が必要です。命にかかわりますから。


でも

慢性膵炎だと、
食欲にムラがあって
ときどき、吐いて
なんだか、好き嫌いが多くて
便がゆるかったり
よく寝ているし、
なんとなく、、
なあなあで見過ごしてしまいそうな症状ですよね。

こういう虚弱な感じの犬猫さんは
慢性膵炎の可能性があります。
慢性膵炎の診断には、血液検査が有用です(特異性があるい、cPLI,fPLI)
(ただ、半減期を考えると、また、軽度の慢性膵炎だと、検出できない可能性があります。数値が低くても、慢性膵炎の疑いを完全否定はできません)

3)急性/慢性膵炎の原因とリスクを高めるもの

・特発性(つまり、原因不明)
  減りつつあります

・自己免疫性
   ステロイドやシクロスポリンの治療に反応します

・遺伝性(Mシュナみたいに、トリプシノーゲンの遺伝子変異)

感染症
 まれですが、
  バベシア、トキソプラズマ、猫伝染性腹膜炎

・高トリグリセリド血症
  Mシュナに多い

・高カルシウム血症

・猫の胆管炎

・薬物
  抗てんかん薬(臭化カリウム、フェノバルビタール)
  抗菌剤
  有機リン剤、カルシウム(猫ちゃん)
  アザチオプリン(免疫抑制剤
  L−アスパラギナーゼ(抗がん剤
  カルシウム

  人間では100種類以上の薬物と膵炎が関連があるといわれています。用量と関係のない特異体質反応により膵炎が起こるといわれています。
つまり、予測不可能ってことです!!


4)治療は
・低脂肪食
・具合が悪いときは吐き気止めの薬(5日間くらい)
・鎮痛剤(非ステロイド薬は逆に膵炎誘発の危険があります)
・猫ちゃんは低脂肪食というよりは、腎臓食や糖尿病食などの高脂肪食を避ける
・二次的なものなら、原因治療


食欲にムラがあるわという犬猫さん、健康診断のときに、ぜひ、膵臓のリパーゼ演繹活性(PLI)を測定してみてはどうでしょう。