ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

症状のない肝臓の病気

実は、アンデイくんは肝臓の病気をもっています。
ですが、無事に10歳の誕生日を迎えています。

経緯は
7歳のころ、

よく吐く
よく水を飲む
といった症状でしたので、

血液検査と血清総胆汁酸を測定したところ、
肝臓の酵素が上昇して、総胆汁酸も高い(200以下の軽度)という結果が、

そこで、
まず、疑うのは
門脈シャントといって、
肝臓にいくはずの血管がスルーしてしまって、
さまざまな病気をひきおこします(けいれん発作など)
この病気かどうかをみるには、
3DのCTで門脈造影検査が一番です。



もちろん、CTなんぞ、一般動物病院にはありませんので、
自分の勉強を兼ねて、
東大の動物病院の大野准教授のところにいきました。

そこで、全身麻酔下(ここが、動物の診察の難しいところですよね!病気の動物に麻酔をかけないと、検査できないというジレンマ)
でCTで門脈造影検査をしてもらいました。

結果は

異常なし。

なぜ、この検査をしたかといいますと、
症状のない肝臓の病気にはいくつかありまして、
これを鑑別するには、ゼッタイに必要な検査なのです

無症候性の先天的門脈体循環シャント(PSS)(ヨーキーに多い)
原発性門脈低形成(異形成)(肝臓の中の血管が少ない)
慢性肝炎

が考えられるので、門脈シャントを否定するために、CT造影検査をしました。
この検査をすると、肝臓の外と、中の血管を造影できる、肝臓の中の門脈という血管の発達、肝臓の中の腫瘤も確認できるからです。
(昔は開腹手術して検査するところです。麻布大学は開腹手術で検査するというので、東大に行きました。遠かった、、)

そこで、アンデイくんは異常なしということで、
門脈シャント(PSS)を否定できたわけで、一安心


次にすすむ場合は、
腹腔鏡下で肝臓の生検が一番よいのですが、、、
ここで肝臓の組織をとって、肝臓の細胞がどうなっているのかという病理検査をするのですが、


大野先生いわく、
検査しても、たぶん、肝内微小血管異形成(MVD)
だろう、、
というお話だったので、

あえて、検査はせずに
経過観察をすることにしました。

肝臓の酵素は、ちょっとしたことで上下を繰り返し
今日にいたっています。
肝臓の酵素というのは、肝臓だけでなく、その他のいろいろの要素で変化します。

この病気(MVD)ですと、


このいいまわしは、ややこしく、
今は原発性門脈低形成(PHPV)という名称に統一されていますが、MVDという用語も残っているので、ややこしい、、

手術では治らない
薬物療法も根本的な解決にはならない
進行せずに経過する

というこことで、

寿命には影響はないと考えられています


で、アンデイくんには、
肝臓の機能を助ける薬をいくつか飲んでもらって、
それなりに、元気に暮らしております。

肝臓が悪いということがわかっても、
それほど悲観しなくてよい場合もあります。

ですが、肝臓は沈黙の臓器といって、
悪くなっても、なかなか症状がでませんので、
悪化することもありますので、
定期的な血液検査をして、経過観察をしつつ、注意が必要ですね。


肝臓悪くても、元気に山登りもできました、
ただし、肝臓が悪い場合は安静が大切ですので、、