ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

猫ちゃんの乳腺腫瘍の予後

猫ちゃんに癌があるとわかったときに

みなが、悩むのは


手術した場合としない場合はどうなるのだろう、、

手術したら絶対、助かるのかしら

手術して再発したら、かわいそう

手術して、さらに抗がん剤治療をするのは、かわいそう

治療や手術しなかったら、苦しむことになるのだろうか

良性だったら、手術しなくてもいいかもしれないのに、



これは、もう、
それぞれのケースバイケースで、その子の運命は神のみぞ知る、、という医療の不確実性というところがありますよね。


日本獣医がん学会というのがありまして、
そのデータをご紹介しますと、、

2007年から2012年の48症例のデータ(腫瘍の治療で有名な南動物病院グループ)

乳がんになってしまった猫ちゃんの平均年齢13歳(6-18歳)

・全症例の中央生存期間は307日(37-1840日)

 つまり、同じような病気になって、同じような病院で治療をうけても、グレードや、発見時期の違い、転移の有無などなどで、生存期間は幅があるということです。

・品種、年齢、潰瘍や壊死の有無、術式に関しては、予後に相関はみられなかったそうです。

・予後に影響を与えたのは、

 腫瘍のサイズ

 組織的なリンパ管・血管浸潤(つまり、転移しやすくなっているかどうかということ)

 リンパ節転移の有無

・リンパ管浸潤がある場合の中央生存期間 197日
 リンパ管浸潤がない場合の中央生存期間 511日

つまり、転移があった場合は、手術しても、197日くらいの延命ということすね。逆に転移がなくて、早期に手術をしたら、500日生きてくれるということです。

・組織グレード分類では、
 中央生存期間は
  グレード1(8例) 1291日
  グレード2(19例) 303日
  グレード3(21例)189日

 つまり、悪性度が低くて、転移していなくて、腫瘍が小さくて、早期に手術をすれば、3年半も生きてくれるということです。発症年齢が13歳なら、16、17まで生きてくれて、寿命をまっとうしてくれるかもしれないということですね。

腫瘍が大きくなって、浸潤している場合に、切除しますと、

片側乳腺切除となって、

水平マージンと深部マージンをとるためには
やはり、傷口が大きくなる

つまり、大きく筋肉を切除する、、

となると、術後合併症がおこりやすい
 具体的には、

縫合部(むりむり、よせるから)が融解、離解しやすい

とったところにしょう液がたまる(空洞ができるから)

皮下血腫ができやすい

包帯をつけたり、圧迫包帯などで対処して(猫ちゃんがなめないように、カラーをつけてもらいます)

場合によっては再縫合、ドレーンで排液

再手術や輸血が必要になったりします。



猫ちゃんの乳腺腫瘍の治療は

 ①第一選択は外科的切除
  両側の乳腺をいっきにとったほうがいいといわれていますが、、、

 ②そして、とった組織を病理検査にだして、
  組織のグレード、リンパ節の転移の有無、周囲組織への浸潤性の有無、血管内にいっているか、取り残しはないか、
を病理検査で調べます。

③切除しきれない炎症性乳がん、リンパ節に転移していることがわかったら、
 
 放射線療法(特殊な治療なので、特別な病院でしかできません。しかも全身麻酔
 それほど、劇的な効果があるかは、どうかは、、根治治療にはなりにくいようです。
ほかの上皮系の腫瘍と同じといわれています。


④化学療法
 転移している、病理的に全身性に進行することが予想される場合は、
 肉眼病変へのドキソルビシンの奏効率は50-64%で、術後の補助療法として有効性があるといわれていますが、まだ、研究段階のようです。


(まったり、、)