ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

高ナトリウム血症

電解質のバランスが崩れ、高ナトリウム血症になることがあります。通常、体は、塩分の濃いものを食べても、それで、ダイレクトに高ナトリウム血症になるわけではありません。これは、食事中のナトリウム摂取量が変動しても、体が、血漿ナトリウム濃度を厳密に調整する能力があるからです。
ですので、カリウムの異常値はよくみられますが、ナトリウムが、異常な数値となって、現れるのは、かなり、エマージェンシーなときです。


ナトリウムの役割は
  体の中の水分のバランスをとるためのものです。細胞外液の浸透圧は、ナトリウム濃度で決まります。

ということで、

ナトリウム濃度が高くなると(160mEq/dl以上)、
浸透圧が高くなって、
体の細胞の中の水分が、細胞外にでてしまうのです。

ということは、

細胞から水がでたら、

細胞が死んでしまいますね。

細胞がこわれていくことは、生命の維持にかかわる、重大なことです。

さて、
高ナトリウム血症になる原因

つまり

 体の水分が不足している脱水
  
 水を飲まない、水が体からでていく、ナトリウムを過剰にとりすぎた ということです。

もうひとつ、

 脳の視床下部の器質的な病変により浸透圧調節系が障害される本態性高ナトリウム血症もあります。

原因を列挙しますと、

まず、
 

熱中症や絶食、などでの脱水


・嘔吐や下痢によって、消化管から水分が失われる

・腎不全
 血漿ナトリウムは腎臓の糸球体でろ過され、いったん尿細管に排泄されるのですが、そのあと、再吸収されて、体のバランスをとっているのです。
腎臓が悪くなると、このバランスが崩れてしまうからです。
腎不全で食べなくなって、おしっこばかりでしまい、脱水することも原因です。
 
・糖尿病

・利尿薬の投与

・高アルドステロン症
 ナトリウムとカリウムの交換をするホルモンが異常に多い。副腎皮質の異常など
この場合は低カリウム血症になります。

・尿崩症(水をがばがばのんで、おしっこする)で水を制限したとき
  おしっこがいっぱいでたのに、水を飲めないと脱水しますよね。

・肝硬変

・細胞内への水分の喪失(発作、横紋筋変性)

・膵炎、腹膜炎(体腔への水分喪失)

症状


犬と猫は、高ナトリム血症のCNS(中枢神経系)への作用に対して人間よりも耐性があるといわれていますが、
高ナトリウム血症が続きますと、


ニューロンの脱水による不可逆性(もとにもどらない)脳損傷を起こします。


急性の高ナトリウム血症は臨床徴候を強くみせますが、慢性的なものでは、わかりにくいです。


元気消失、衰弱
筋力低下
抑うつ

やがて、
昏睡

死亡
していきます。

デッドラインは
正常値が150ですが、

180を超えるとかなり危険です。
170以上は、厳重なモニタリングが必要です。

治療は

 原因の除去
 輸液
 脱水の改善

 急激に補正しますと、脳浮腫をおこしますので、24時間以上かけて、ゆっくり補正しなければいけません。