ベルどうぶつクリニックのブログ

東京都町田市にあるどうぶつ病院ベルどうぶつクリニックです

犬の眼の疾患の80%が遺伝性

眼科専門獣医師によれば、犬の眼の疾患の80%は遺伝性だそうです。
例をあげます。

アメリカン・コッカとくれば、
  白内障緑内障、チェリーアイ(瞬膜腺がとびだす)

ミニチュア・ダックスフンドさん
  進行性網膜萎縮

進行性網膜萎縮の病気は、ダックスさんと、プードル(特に、ブラックとグレイのプードルに多い)に多い遺伝性の病気です。チョコレートとアプリコットのプードルさんは、白内障が多いとのことです。
ダックスさんは、2歳か、あるいは6歳くらいで、網膜萎縮が起こりますが、進行性ですので、突然失明するわけではありません。はじめに、夜盲症から始まります。夜の散歩を行きたがらない子犬の中には、この病気のため夜盲症である可能性があります。そして、2,3歳で網膜萎縮して失明してしまいます。あるいは、4歳くらいから、この病気が発症する場合も、夜盲症から症状がはじまり、6歳で失明します。そうなると、泡をはくとか、動かない、外にでたがらないというような症状になり、はじめて眼の病気に気付くということになります。この病気で網膜が委縮しますと、失明するだけではなく、やがて白内障になります(99.9%の確率)。そして、白内障になりますと、水晶体の中のタンパクが漏出し、これが外にでますと、炎症をおこし、ブドウ膜炎という眼の奥の炎症がおきます。そして、慢性的なブドウ膜炎が起き、眼の中の房水がうまく排泄されなくなり、眼圧が上昇し、緑内障になり、それが悪化すると、牛眼となり、強い眼の痛みを伴います。この治療方法は、眼の中身をとりだし、シリコンの義眼をいれるというようなことになります。こうならないように(進行性網膜萎縮が治るという意味ではありませんが)、抗酸化作用のあるサプリやビタミン剤の内服をするとよいようです。

・柴犬さんの緑内障
 眼が赤くなってからは治療は遅いといわれています。黒眼が白くなって、結膜が充血していて、はじめて気付くのですが、このようになってしまった場合は、眼圧が40をこえた状態が2週間たっていることになり、すでに視神経はダメージをうけているため、失明してしまっているということになります。
ですから、柴犬さんは、特に眼圧の測定をきちんと定期的に行う必要がありまう。
ちなみに、犬の正常な眼圧は20前後-25くらいですが、個体差があります。人間も正常眼圧緑内障があるように、同じ眼圧でも(朝、眼圧が上がる、1日のうちで変動する)視神経にダメージを与える眼圧というのは犬種で、異なります。例えば、若い犬で小型犬は眼圧が高めでも正常です。年をとった大型犬は眼圧は低めになります。
柴犬さんは、日本人と同様、眼の色素(メラニン色素)が多いので、緑内障になりやすいそうです。さすが、「和」のワンコ、、

・ゴールデンさんのブドウ膜症候群
  虹彩に嚢胞ができ、やがて、7.8歳には緑内障になって失明する病気です。これは、「ゴールドラッシュ」という血統がはいっているゴールデンに発症するといわれています。血統書をご確認ください。点眼予防する必要があります。

シーズーさんの露出性角膜症候群
  シーズーさんは、まばたきがきちんとできないため、眼の中心に角膜潰瘍ができやすいのです。角膜上皮についた小さなキズでしたら、7-12時間でキズが治るのですが、それが治らないのは、背景にドライアイがある、角膜の上皮と実質の接着不全というような、原因があるから、角膜にできた傷がどんどん深くなっていきます。血清点眼(血液には角膜上皮成長因子があるから)やヒアレイン点眼液の頻回投与が必要となります。眼薬ができないワンコさんですと、かなり治療が難しくなります。日頃から眼をさわれるよう、ワンコさんと一緒に練習しましょう。

・シエパードさんの慢性表層角膜炎
  紫外線が影響するといわれています。海外では、犬用のUVカット医療用サングラスをつけるよう推奨されているそうです(おもちゃのではなくて、ドグルフという製品があるそうです)。高層マンションの窓際でひなたぼっこを好むダックスさんにも多いそうです。


・ビーグル、ブルドックさんのチェリーアイ
 遺伝性のチェリーアイは、2歳齢までに通常、発症します。瞬膜軟骨の奇形、瞬膜腺の脱出が原因です。遺伝的に多い犬種でない場合は、瞬膜腺の炎症を疑って点眼治療からはじめます。
チェリーアイ好発犬種でなく、5歳以上のワンコさんで、瞬膜腺が大きく突出する場合、腺癌という病気も可能性として考えられます。

・バグ、シーズーさんの色素性角膜炎
ドライアイがあると、慢性的刺激をうけて、メラニン色素があがってきて、眼の表面が黒くなります。失明はしませんが、ここに紫外線があたることにより、扁平上皮癌になるといわれています。ドライアイの治療が大切です。
シエルテイーや柴犬さんなど、鼻の長いワンコさんは、角膜神経が鋭敏にできているので、毛が眼にはいると、たいへん気にします。ですが、シーズーさんなどの鼻の短い短頭種は、角膜神経が鈍性なので、毛がはいっても、さほど気にしないといわれています。眼の周りの毛が眼にはいることも、慢性的な刺激の原因になりますので、気をつけてあげましょう、、